会社設立に必要な定款とは?経営者になるための基礎知識
目次
会社を設立する上で必要な「定款」とは?
定款(ていかん)とは?
定款とは、会社を運営していく上での基本的な規則をまとめたもののこと。守るべき大きなルールを定めたものであることから、「会社の憲法」と呼ばれることもあります。
定款に記載される主な内容は、その会社の商号や目的(事業内容)・本店所在地・株式に関する内容・事業年度(何月から何月まで)などです。
会社を設立する際には、その会社の本店を管轄する公証役場で定款認証の手続きを行う必要があります。定款認証とは、正当な手続きによって定款が作成されたことを公証人によって認めてもらう手続きのことです。
定款は公証役場だけではなく、法務局でもその内容が確認されます。公証役場と法務局という公的機関からのダブルチェックが入る、ということになります。
そもそもなぜ定款が必要?
定款には「会社が守っていくべき大事なルール」という役割がありますが、その他にも2つの役割があります。
1つ目は、会社設立手続きの要件をクリアするという役割。公証役場と法務局で定款を認めてもらわないことには会社設立自体ができないため、定款作成は必須となります。
2つ目は、会社設立時の各種トラブルを防止するという役割。会社設立の段階ではまだ会社そのものが存在しません。このタイミングでトラブル等が起こらないよう最低限の取り決めをしておく必要があり、定款にはその最低限の取り決めが記載されているのです。
非常に重要な「原始定款」とは?
「原始定款」とは、会社設立の際に公証役場から認証を受けた最初の定款のこと。社内に「原始定款」1通を保管しなければならないと義務付けられており、もし「原始定款」の提出等が必要となった場合には、原本ではなくコピーを取り、そのコピーと原本の内容に相違がないことを証明する書類を添える必要があります。
なお、定款の内容は株主総会の決議を通じて変更することが可能です。「原始定款」に対して、変更が加わった最新の定款のことを「現行定款」と言います。
定款は紙で作成しないとダメ?
定款は、紙媒体のほか、電子媒体でも作成・提出が可能です。
電子媒体で作成された定款のことを電子定款と言います。電子定款はPDF化されている必要があることから、Wordなどで作成した定款は、提出前にPDF化しなければなりません。
紙媒体での定款は印紙税法の対象となるため、提出にあたっては4万円の印紙代が必要となります。一方で電子定款は印紙税法では文書扱いにならないことから、印紙代は不要。定款認証のコストや時間の節約にもなることから、近年では多くの企業で電子定款が採用されています。
定款のフォーマットは決まっている?
定款の内容は、主に次の4つの要件により異なります。
公開会社か非公開会社か
非公開会社の場合、株式の譲渡制限を定めておかないと、創業者の一部が任意で株を売却しかねません。株式の勝手な売却は会社にとってのリスクとなるため、少なくとも株式を公開するまで(上場するまで)は譲渡制限を付けておくべき。この趣旨から、公開会社と非公開会社とでは定款のフォーマットが異なります。
取締役の人数
取締役の人数によっても定款のフォーマットが異なります。具体的には、取締役が「1名」「1~3名以下」「3名以上」のそれぞれで異なるフォーマットを使用することになります。
取締役会の設置の有無
経営上の意思決定を行う機関には取締役会と株主総会がありますが、株主総会のみに頼る方法では意思決定に時間が掛かりすぎるため、フットワークの軽い経営ができません。
経営をスムーズに遂行するためには取締役会の設置が必要であり、取締役会を設置する場合は他とは異なるフォーマットで定款を作成する必要があります。
なお、取締役会を設置するためには、3名以上の取締役を置く必要があることも覚えておきましょう。
監査役を置くか
取締役会を設置する場合には、監査役の設置が必須となります。監査役を設置する場合には、それに即したフォーマットを使用します。
定款に記載すべき3つの事項
定款に記載する事項を大きく分けると、「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3つがあります。それぞれ詳しく見てみましょう。
絶対的記載事項
絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない事項のこと。具体的には次の事項です。
- 商号(会社の名称)
- 目的(会社の事業内容)
- 本店の所在地
- 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
- 発起人の氏名または名称及び住所
- 発行可能株式総数
相対的記載事項
相対的記載事項とは、必ずしも定款に定める必要がないものの、定めた場合には効力が生じる事項のこと。たとえば次のような事項です。
- 変態設立事項(会社法28条)
- 取締役会の設置(会社法326条2項)
- 監査役会の設置(会社法326条2項)
- 会計監査人の設置(会社法326条2項)
変態設立事項とは、発起人の権限乱用によって会社・株主・債権者などが害される恐れを含んだ会社設立において、それらの損害が生じないよう「検査役」の調査などを設定する事項を指します。具体的には、「現物出資」「財産引受」「発起人の報酬」「設立費用」については、変態設立事項としての定めが必要となります。
任意的記載事項
任意的記載事項とは、絶対的記載事項にも相対的記載事項にも含まれない事項のうち、法律に反しない範囲で会社が自由に定めることができる事項のこと。たとえば次のような事項です。
- 取締役の人数
- 株券不発行に関する規定
- 事業年度に関する規定
いずれも定款に記載する義務はありませんが、記載することにより決定事項を明確にし、かつ社内に周知させる効果が生まれます。
定款の記載例
「株式会社」「一般社団法人」「一般財団法人」の3種類の法人について、それぞれの定款の具体的な記載事項や注意点、記載例などを見てみましょう。
なお、小規模法人、中規模法人、大規模法人により定款の記載項目は異なりますが、ここでは「中規模法人」をモデルに記載例等をご紹介します。
株式会社の場合
記載すべき項目
中規模の株式会社の定款では、主に次のような項目が記載されます。
総則 | 商号、本店所在地、公告方法 |
株式 | 発行可能株式総数、株式の譲渡制限、相続人等に対する売渡請求など |
株主総会 | 召集時期、招集権者、招集通知など |
取締役及び代表取締役 | 取締役の員数、取締役の資格、取締役の専任など |
監査役 | 監査役の員数及び選任、監査役の任期、監査役の報酬及び退職慰労金 |
計算 | 事業年度、剰余金の配当、配当除斥期間など |
附則 | 設立に際して出資される財産の価額、設立後の資本金の額、最初の事業年度など |
記載の注意点
取締役会を設置する場合には、3名以上の取締役を置くことが必要です。また、原則として1名以上の監査役を置くことも必要です。これらを踏まえ、定款における「取締役」および「監査役」規定の冒頭の記載例として、次のように各役員の人数を置くことが一般的です。
第4章 取締役及び取締役会 (取締役の員数) 第22条 当会社の取締役は、3名以上7名以内とする。 |
第5章 監査役 (監査役の員数及び選任) 第35条 監査役の員数は、1名とする。 |
一般社団法人の場合
記載すべき項目
中規模の一般社団法人の定款では、主に次のような項目が記載されます。
総則 | 名称、事業所、目的など |
社員 | 入社、経費等の負担、退社など |
社員総会 | 構成、権限、開催など |
役員 | 役員の選任、理事の職務及び権限、監事の職務及び権限など |
理事会 | 構成、権限、招集など |
基金 | 基金の拠出等 |
計算 | 事業年度、事業計画及び収支予算、事業報告及び決算 |
定款の変更、解散及び清算 | 定款の変更、解散、残余財産の帰属 |
附則 | 最初の事業年度、設立時の役員、(設立時社員の氏名又は名称及び住所など |
記載の注意点
法人に理事会を設置する場合には、3名以上の理事を置くことが必要です。また、1名以上の監事を置く必要もあります。これらを踏まえ、定款における「理事」および「監事」規定の冒頭の記載例として、次のように各役員の人数を置くことが一般的です。
第4章 役 員 (役員) 第19条 当法人に、次の役員を置く。 (1)理事 3名以上○名以内 (2)監事 ○名以内 2 理事のうち、1名を代表理事とする。 |
一般財団法人の場合
記載すべき項目
中規模の一般財団法人の定款では、主に次のような項目が記載されます。
総則 | 名称、目的、公告の方法 |
資産及び会計 | 財産の拠出及びその価額、基本財産、事業年度など |
評議員及び評議員会 | 評議員の選任及び解任、評議員の任期、評議員会の権限など |
役員及び理事会 | 役員の選任、理事の職務及び権限、理事会の招集など |
定款の変更、解散及び清算 | 定款の変更、解散、残余財産の帰属 |
附則 | 設立時の評議員、設立時の役員、最初の事業年度など |
記載の注意点
法人内に会計監査人を置かない場合には、基本財産の定めを記載したほうが良いでしょう。定款での基本財産の定めについては、次のような記載例となります。
第2章 資産及び会計 (基本財産) 第6条 前条第1号の①及び②の財産は、第3条の目的事業を行うために不可欠な基本財産とし、善良な管理者の注意をもって管理しなければならず、やむを得ない理由によりその一部を処分又は担保に提供しようとするとき及び基本財産から除外しようとするときは、あらかじめ評議員会において議決に加わることができる評議員の3分の2以上に当たる多数の承認を受けなければならない。 |
定款作成から会社設立までの流れとは?
定款作成から会社設立までの大きな流れについて、次の4つのステップを基に見てみましょう。
1.定款作成
会社設立する際の最初のステップが定款作成。すでに詳しく説明済みですが、絶対的記載事項・相対的記載事項・任意的記載事項それぞれの意味をよく理解し、専門家の助言も仰ぎながら法的に正しい手順で定款を作成しましょう。
絶対的記載事項に漏れが生じることは殆どないと思われますし、任意的記載事項の内容は会社の自由ですが、問題は相対的記載事項。相対的記載事項の内容によっては金銭トラブル等に発展する恐れもあるため、内容を決定する際には発起人全員で十分に協議し、かつ協議の議事録を残しておくことが大切です。
2.定款認証
定款認証とは、作成した定款が法的に正しい手続きで作成されたことを証明してもらうプロセスのこと。公的機関である公証役場において、公証人が定款を認証する形となります。
ただし、持分会社(株式を発行しない形態の会社)を設立する際には公証人による定款認証は不要です。持分会社とは、具体的には合名会社・合資会社・合同会社を指します。
3.法人登記
法務局で法人登記の申請手続きを行います。
法人登記の申請手続きには、公証人の認証がある定款・法人の印鑑届出書・出資金払込証明書・登録免許税(最低15万円)といったものが必要となります。二度手間にならないよう、必要な書類やお金が揃っているかを確認してから法務局へ向かいましょう。
参考までに、一般に言う「会社設立日」は、法務局で法人登記を申請した日となります(書類不備がない限り)。「会社設立日」にこだわる方は、確実に希望する日に申請手続きが完了するよう、余裕を持って事前の手続きを進めておきましょう。
4.会社設立
法務局での法人登記手続きが完了すると「登記事項証明書」が交付され、この書類の交付をもって会社設立手続きは完了となります。
ただし、会社設立には設立手続き以外にも多くの手続きが必要となります。法人登録が完了しただけでは企業としてスタートすることはできないので、以下のような各種手続きを漏れなく進めていきましょう。
- 税務署への設立の届出、青色申告の届出など
- 年金事務所での厚生年金・健康保険の手続き
- ハローワークでの雇用保険の手続き
- 労働基準局での労災保険の手続き
- 業種に応じた各種許可申請手続き
会社設立が最小限の費用で叶うサービスに注目
会社設立に向けた具体的なプロセスの中で、最初に行うべきことの一つが定款作成。「会社の憲法」と呼ばれるほど大事な規定なので、発起人全員で十分に協議しながら慎重に作成していく必要があります。
とはいえ、定款作成は決して簡単ではありません。会社の形態や条件によって必要な書式は変動し、漏れがあれば法人登記は認められないため、必要事項を正確に把握し、不備なく埋める必要があるのです。
自力で定款作成や法人登記ができないことはないですが、抜け漏れの無い定款作成やスムーズな法人登記のためには、専門的な知識や作成経験を持つプロの力を借りるのが得策といえます。
西井大輔税理士・公認会計士事務所では、会社設立前の大事な時期にお客様が本業の準備に全力で取り組めるよう、会社設立に関する各種サポートを一貫して行っています。
会社設立サポートを行っている会社には、税理士事務所や行政書士事務所が多く見られるようですが、税理士や行政書士の資格のみでは、会社設立の「サポート」はできても「代行」はできません。
「代行」もできる資格は、司法書士と公認会計士のみ。当社には公認会計士も在籍しているため、会社設立の各種手続きを「代行」することが可能です。
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