会社設立すると一人でも社会保険へ加入が必須なの?
目次
会社設立と社会保険加入の関係性
社会保険の加入は法人の義務
社会保険には狭義と広義、2つのジャンルがあります。
狭義の社会保険とは「健康保険」と「厚生年金保険」の2種類。広義の社会保険とは、この2種類に「雇用保険」と「労災保険」などを加えたものです。
これらのうち、「雇用保険」と「労災保険」については社長1人の会社に限り加入しなくても良い(加入できない)ケースもありますが、「健康保険」と「厚生年金保険」についてはたとえ社長一人の会社でも必ず加入しなければなりません。また、個人事業主であっても従業員を常時5名以上雇っている場合には各種社会保険への加入が義務付けられています。
会社設立した際には、従業員を雇用しているかいないかに関わらず、速やかに「健康保険」と「厚生年金保険」の加入手続きをする必要があると覚えておきましょう。
※以下で使用する「社会保険」という用語は、特別な断りのない限り「狭義の社会保険(健康保険と厚生年金保険)」を指すものとします。
社会保険加入義務と役員報酬の関係
原則として条件を満たした全ての役員・従業員が加入しなければならない社会保険ですが、例外的に社会保険に加入しなくても良いケースがあります。
たとえば、社長が役員報酬を受け取っていない場合(給料をもらっていない場合)には、その社長の社会保険への加入義務はありません。正確に言えば、社会保険への加入条件を満たしていないため、加入することができません。
また、仮に役員報酬を受け取っていたとしても、その金額が社会保険料を下回る場合は社会保険への加入義務を満たしていないため、その社長は社会保険に加入することができません。
社会保険に加入できない社長は、個人事業主と同様「国民健康保険」と「国民年金」に加入することになります。
社会保険に加入せずにいると起こること
社会保険の加入条件を満たしている人は、全員が社会保険への加入を義務付けられます。加入が義務であるにも関わらず加入しない場合には、次のようなことが起こります。
1.加入要請の連絡が入る
会社の本店を管轄する年金事務所から、電話や文書により加入要請の連絡が入ります。
2.加入を促す警告文書が届く
加入要請の連絡が入っても加入手続きを行わない場合には、加入を促す警告文書が届きます。年金事務所に来所して加入してください、という内容の文書です。
3.立入検査と強制加入
警告文書が届いたにも関わらず、社会保険へ加入せずに事態を放置した場合は、年金事務所から立入検査が行われた上で強制加入となります。
社会保険に加入せずにいることのリスク
社会保険未加入の立入検査が入った会社は、未加入に対する罰則として、最大2年間をさかのぼって保険料を納付しなければなりません。従業員が多い場合、2年間の保険料を追納するのは会社にとって大きな負担となるでしょう。
従業員本人もまた最大2年分の保険料を追納する必要があることから、従業員から会社への反発は必至。場合によっては、現役の従業員や退職した従業員から会社を相手取った損害賠償訴訟を起こされる可能性もあります。 なお、社長以外の従業員を1人でも雇用している会社は、その従業員を健康保険・厚生年金のみならず雇用保険や労災保険(広義の社会保険)にも加入させなければなりません。もし雇用保険に未加入だった場合には、会社は国や自治体などの助成金を受けられないことがあります。
そもそも社会保険とは
国民健康保険との違い
会社から加入する健康保険と国民健康保険は、主に次の3点で違いがあります。
1.加入する人
社会保険としての健康保険(会社等で加入する健康保険)は、一定の条件を満たした会社員や会社役員、その配偶者や子供などが加入します。
それに対して国民健康保険は、個人事業主やその配偶者や子供、学生、無職の方などが加入します。
2.保険の運営主体
社会保険としての健康保険は、「協会けんぽ」や企業グループ独自の組織などが運営しています。
それに対して国民健康保険は、市区町村が運営しています。
3.保険料
社会保険としての健康保険は、現在もらっている給与を基に保険料が算出されます。また、保険料の半分は会社が負担することになります。
それに対して国民健康保険は、被保険者の前年の所得を基に保険料が算出されます。保険料の一部を自治体が負担することはなく、保険料の全額を被保険者が負担することになります。
なお、直近まで会社員として社会保険に加入していた人が退職した場合、その後2年間に限り、元・勤務先の健康保険に継続して加入することができます。この制度のことを「任意継続」と言います。
「社会保険」に含まれるもの
冒頭でご説明した通り、社会保険には狭義の社会保険と広義の社会保険があります。改めて確認しておきましょう。
- 狭義の社会保険…健康保険・厚生年金保険
- 広義の社会保険…健康保険・厚生年金保険・労災保険・雇用保険
会社員にも個人事業主にも同じく課される「介護保険」は健康保険制度の一部となるため、概念上は狭義・広義のどちらの社会保険にも含まれます。
健康保険とは
一般に、「健康保険」という場合は会社等で加入する社会保険としての「健康保険」を指します。保険の運営主体は協会けんぽや企業グループ独自の組織などで、業務外における病気やケガなどの治療費の一部・出産費用の一部・死亡した場合の埋葬料(5万円)などが被保険者に支給される制度です。
健康保険に加入している人は、原則として病気やケガなどの治療費の自己負担割合が3割まで抑えられます(※1)。
※1:参照:厚生労働省「医療費の一部負担(自己負担)割合について」(2022年6月調べ)
厚生年金保険とは
会社員であれ個人事業主であれ無職であれ、20歳以上60歳未満の全ての日本国民は国民年金保険に加入することが義務付けられています。加入期間に納付した保険料などに応じて算出された金額が、老後の生活費(年金)として受給される仕組みです(※2)。
個人事業主などはこの国民年金保険の加入のみで問題ありませんが、会社員などは国民年金保険に上乗せして厚生年金保険にも加入しなければなりません。
厚生年金保険を上乗せする分、会社員等の保険料負担は大きくなりますが、その保険料の半分は会社が負担することになるため、被保険者個人の保険料負担は半分で済みます。なおかつ、厚生年金保険に加入していた会社員等は、国民年金保険のみを納付してきた個人事業主等に比べると老後に受給できる年金額が約3倍となります(※3)。厚生年金保険は、加入者にとってかなり有益な制度だと言えるでしょう。
※2:厚生労働省「教えて!公的年金制度 公的年金制度はどのような仕組みなの?」
※3:日本年金機構「令和4年4月分からの年金額等について」(2022年6月調べ)
雇用保険・労災保険の加入義務の条件
雇用保険とは、従業員が退職して失業した場合などに、失業中の生活の安定や再就職に必要な現金の一部を給付する制度。労災保険とは、業務上の理由によって従業員がケガをしたり病気にかかったり、または死亡したりした場合などに、本人や遺族を保護する目的で現金を支給する制度です。
31日以上の雇用見込みがある従業員のうち、1週間の所定労働時間が20時間以上の従業員は全員雇用保険に加入しなければなりません。また、労災保険はパート・アルバイトも含めて従業員全員に加入義務があります。 雇用保険と労災保険の保険料は、事業主が全額負担することが義務付けられています。
社会保険に加入するには
社会保険の加入時期
広義の社会保険には、健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険の5種類があります。
健康保険・厚生年金保険・介護保険については、会社を設立して5日以内に加入手続きを行わなければなりません。雇用保険と労災保険は、従業員を雇用した日の翌日から起算して10日以内に加入手続きを行う必要があります。
いずれの保険も、加入手続きの期間は短めです。会社を設立したら、速やかに社会保険の加入手続きを行うようにしましょう。
各保険の加入に必要な書類
各保険の加入に必要な書類、および書類の提出先は次の通りです。
保険 | 必要な書類 | 提出先 |
健康保険 厚生年金保険 介護保険 | 健康保険・厚生年金保険新規適用届 | 会社の所在地を管轄する年金事務所 |
健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届 | ||
被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届) | ||
各種添付書類 | ||
雇用保険 労災保険 | 保険関係成立届 | 労働基準監督署 |
雇用保険適用事業所設置届 | 公共職業安定所(ハローワーク) | |
概算保険料申告書 | 労働基準監督署、都道府県労働局、日本銀行のいずれか | |
雇用保険被保険者資格取得届 | 公共職業安定所(ハローワーク) |
従業員を雇った場合の社会保険
会社設立した場合だけではなく、新たに従業員を雇用した場合にも各種社会保険の手続きを行う必要があります。
健康保険と厚生年金保険については、新たな従業員が入社した日から起算して5日以内に「健候補k年・厚生年金保険被保険者資格取得届」を年金事務所へ届け出なければなりません。また、その従業員に扶養家族がいる場合には、同時に「被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)」も届け出る必要があります。
雇用保険については、新たな従業員が入社した日の翌日から起算して10日以内に公共職業安定所(ハローワーク)で「雇用保険被保険者資格取得届」を届け出ます。 労災保険については会社単位で加入しているため、新たな従業員を雇用した際に特別な手続きは必要ありません。
「社会保険労務士」の社会保険加入サポートとは
社会保険労務士(社労士)とは、「労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資すること」を目的に、「人と労働」に関連する専門的な業務を提供している国家資格者のこと。主に次のような相談や依頼に対応しています。
- 各種社会保険の手続き代行
- 労務管理の相談・指導
- 年金の相談
- 労働に関する紛争の解決手続き
- 労働や社会保険に関する裁判の補佐人(弁護士をサポート)
会社設立時に特に力強いサポートとなる業務が、「各種社会保険の手続き代行」です。
労働社会保障に関連する法律は、改正が多いことで知られています。改正を反映していない申請は、当然ながら認められません。各種書類の提出にはタイムリミットがあるため、自分で書類の作り直しをする十分な余裕もないでしょう。
社会保険労務士は、労働社会保障関連の法律を熟知している専門家。当然ながら、法改正があった際にはタイムリーに各種書類へ反映することができます。 会社設立直後は、本業を軌道に乗せるために重要な時期。その重要な時間を書類作成や届出などに割くことは、好ましいとは言えません。本業に専念するためにも、煩雑な社会保険関連の手続きは社会保険労務士に一任するのが賢明でしょう。
会社設立が最小限の費用で叶うサービスに注目
会社設立において必要となる手続きは、社会保険関連だけではありません。定款作成や公証役場での定款認証、法務局での登記申請、税務署や都道府県税事務所への届出など、並行して行うべき手続きが山のようにあります。
本来であれば本業に向けた準備に専念したい大切な時期に、それらの手続きに忙殺されるような事態は避けたいところでしょう。円滑な事業スタートのためにも、会社設立に関連する手続きに関しては、できるだけプロの力を借りることをおすすめします。
西井大輔税理士・公認会計士事務所では、会社設立に向けた大事な時期にお客様が事業に専念できるよう、会社設立に向けた各種サポートを一貫して行っています。
会社設立のサポート役としては行政書士や税理士の先生方も活躍しておられますが、行政書士や税理士の資格のみでは会社設立手続きの「サポート」や「助言」はできても手続きの「代行」まではできません。法的に「代行」が認められているのは、司法書士と公認会計士のみです。
当社には「代行」まで一貫して対応できる公認会計士が在籍しているので、お客様の会社設立をワンストップで支援することができます。また、会社設立後の顧問契約を前提とする場合には、会社設立にかかるお客様の実質的負担が92,000円に抑えられる「プラチナプラン」をご用意しております。各種申請手続き代行はもちろん、資金調達から事業計画策定までトータルにサポートが可能なプラン。さらに、社会保険や労務申請、業種によっては会社設立時に必要となる許認可についても、対応できる士業と連携し、的確なアドバイスをお届けしています。
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