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会社設立後の赤字・黒字はどう決まる?定義を正しく理解しよう

念願の会社設立を果たした後、経営者は常に黒字決算となるよう努力と工夫を継続しなければなりません。長く経営していく中で、不本意にも赤字決算となる年度もあるでしょう。

ただし、たとえ赤字決算になったとしても、経営者は過剰に落ち込む必要はありません。赤字の会社でも立て直しができるよう、国は柔軟な税制で会社をサポートしているからです。

ここでは、黒字と赤字の定義、赤字決算のメリット・デメリット、黒字で倒産する例などについて詳しくご紹介しています。

会社における「黒字」と「赤字」の定義

黒字とは収入が支出を上回っている状態を言い、赤字とは支出が収入を上回っている状態を言います。
ただし、「支出」と「収入」のそれぞれの想定範囲の違いにより利益や損失の金額が異なるため、一概に黒字と赤字を定義できません。

一般的に企業会計では、以下でご説明する通り「営業利益」「経常利益」「純利益」の3つの項目において黒字・赤字が注目されます。

営業利益における黒字・赤字

営業利益とは、その企業が「本業」のみで稼いだ利益を言います。本業で得られた売上高から、本業の活動に要した支出(仕入原価、販売費、一般管理費)を差し引いた利益が営業利益です。

営業利益が黒字であれば、本業で儲けが出ていることになり、営業利益が赤字であれば本業で損失が出ていることになります。

経常利益における黒字・赤字

経常利益とは、本業以外からも経常的に得られる収入を含め、事業全体で稼いだ利益を言います。
例えば本業を製造業とする会社が、保有している不動産から定期的に家賃収入を得ている場合、この家賃収入と本業からの収入を合算して得られた利益が経常利益です。

本業が赤字であっても、不動産収入などの経常的な収入が加わることで、企業全体としては黒字になることもあります。

純利益における黒字・赤字

純利益とは、経常利益から特別利益・特別損失、および各種税金を差し引いて算出される企業活動の純粋な利益を言います。

特別利益・特別損失とはその期で例外的に生じた利益・損失のことで、例えば不動産の売却益や売却損などが該当します。
特別利益・特別損失の金額が大きすぎる場合、純利益だけで企業活動の良し悪しを判断することは難しいかもしれません。

赤字決算の主なメリット

「赤字決算」という言葉の響きはあまりよろしくありませんが、実務的な視点に立てば、赤字決算にもいくつかのメリットがあります。
以下、主なメリットを見てみましょう。

法人税がかからない

赤字決算の会社には、法人税がかかりません。

法人税の税額は「課税所得金額×法人税率」で算出します。赤字決算である以上、課税所得金額はマイナスですので法人税がかかりません。

繰越欠損金控除を利用できる

繰越欠損金控除とは、今期に生じた赤字分を来期以降にも分散して算入する決算処理を言います。

例えば今期に1000万円の赤字が出た場合、今期の決算に500万円を計上し、来期の決算に残り500万円を計上する、という決算処理が繰越欠損金控除です。
仮に来期の事業が黒字になったとしても、前期からの繰越欠損金をぶつければ、法人税などの節税につながります。

繰越欠損金控除が利用できる最長期間は10年。今期に生じた赤字は、以後10年間にわたって分散して繰越処理していくことができます。

なお、繰越欠損金控除を利用するには、欠損金が生じた年度に確定申告(青色申告か白色申告)を行い、かつ繰越する年度にも確定申告を行うことが条件となります。

資本金1億円以下の企業なら法人税の還付を受けられる

資本金1億円以下の中小企業が赤字決算となった場合、前期に納付した法人税の還付を受けられます。繰越欠損金控除とは別に、選択肢が1つ増える形です。
ただし還付を受けられる金額は、前期に納付した法人税が上限です。

前々期に納付した法人税までさかのぼって還付されることはありませんので、赤字額が大きい場合には、繰越欠損金控除を利用したほうが有利になるかもしれません。
なお、赤字決算による法人税の還付制度を利用するためには、青色申告で確定申告をすることが条件となります。

赤字決算の主なデメリット

赤字決算にはいくつかのメリットがあるものの、事業が赤字である以上、当然ながらデメリットもあります。
赤字決算の主なデメリットを見てみましょう。

倒産リスクが高くなる

単発的かつ少額の赤字決算でしたら、経営に大きな問題となることはないかもしれません。しかし、連続的に赤字決算となっている場合や巨額の赤字決算を出した場合などは、会社の倒産リスクが高まります。

税務会計制度の駆使で赤字決算の恩恵を受けられますが、会社を倒産させないためには、黒字決算できちんと納税し、利益を出し続けられる健全な経営を目指すことが大切です。

金融機関からの融資を受けにくくなる

一般的に赤字決算の会社は、金融機関からの融資を受けにくくなります。

もちろん、特別損失などの理由で一時的に赤字が生じた例であれば融資可能となる場合もあります。しかし、特別な理由なく赤字決算となった会社については、融資の審査が大変厳しくなるでしょう。

一般的には2期連続で赤字決算になると金融機関からの融資が打ち切られると言われています。ですが、創業間もない会社における計画通りの赤字の場合には、すぐに融資が打ち切られることはありません。
また、経営者に十分な担保(不動産など)がある場合には、たとえ赤字決算でも、すぐに融資を打ち切られることはないでしょう。

税務署から不正申告を疑われる

連続して赤字決算の確定申告をしている会社は、税務署から不正申告を疑われる可能性があります。例えば、実際には利益の出ている会社であるにもかかわらず、架空の損失を計上して税金逃れをしているのではないか、と疑われるようなケースです。

不正申告を疑われた場合、高い確率で税務調査が実施されるでしょう。税務調査とは税務署による会社の帳簿や書類などのチェックのことで、税務署職員が会社に来訪する形で行われます。

税務調査の結果、その申告が事実と判明すれば、特に問題はありません。逆に虚偽申告であることが判明すれば、さかのぼって正規の税金を納付するとともに、追徴課税や延滞税などの納付が求められる可能性もあります。
著しく悪質な虚偽申告と判断された場合、脱税容疑で逮捕されるかもしれません。

黒字でも倒産することがある

赤字決算が続けば倒産リスクも高くなることは容易に想像できますが、逆に、件数は多くないものの黒字決算のまま倒産する事例も見られます。
以下、黒字決算で倒産する主な例、および黒字倒産のリスクを避ける主な方法をご紹介します。

黒字でも倒産する例

企業間取引(BtoB)においては、提供した商品やサービスを対価をすぐに受け取れるとは限りません。商品・サービスを提供してから数ヶ月後にまとめて決済されることも少なくありません。
このタイムラグの間に、仕入コストや人件費、返済などが重なると、手元の資金が不足して倒産してしまうことがあります。

注意したいのは、設立直後から急速に成長している会社です。会社の急成長にあわせて在庫や売掛金が急速に膨らみ、短期的な資金繰りが間に合わずに黒字倒産してしまう例が見られます。

黒字倒産のリスクを避ける方法

商品やサービスの提供と対価回収のタイミングについて、しっかりと把握しておくことが大切です。
その上で、対価回収のタイミングをなるべく早く設定し、逆に支払いのタイミングをなるべく遅く設定できれば、資金繰りは大変楽になります。
過剰在庫も抱えないよう、正確に在庫状況を確認しましょう。

これらの対策を意識的に継続すれば金融機関からの信用も得られやすくなりますので、万が一黒字倒産のリスクが生じた際でも、短期的な融資を受けられやすくなるでしょう。

確定申告によって自動的に処理される「法人税等」とは

会社は、確定申告を行うことで法人税の納税をしますが、確定申告を通じて同時に処理されている税金は、法人税の他にもいくつかあります。
それら一連の税金は、法人税と一緒に処理されることから「法人税等」とひとくくりに表現されることもあります。
以下、「法人税等」の主な内訳を見てみましょう。

法人税

法人税とは、会社の所得に対して課される国税です。個人の所得に対して課される所得税と同様の位置づけとなります。赤字決算の場合には、法人税の支払い義務がありません。

地方法人税

地方法人税もまた、会社の所得に対して課される国税ですが、いったん国が預かった後、地域間での税収の偏りがないよう調整した上で各自治体へ分配する形となります。

結果として地方の財源となるため「地方法人税」という名称が与えられていますが、地方法人税は地方税ではなく国税となります。

都道府県民税・市町村民税(法人住民税)

都道府県民税・市町村民税とは、会社のある自治体に対して納付する税金の一種です。「法人住民税」という名前でまとめられていることが一般的です。
法人住民税には、法人税額に応じて金額が決まる「法人税割」と、資本金の額や従業員の人数に応じた定額が課される「均等割」の2種類があります。

赤字決算の場合、法人税は非課税となるため「法人税割」も免除されますが、「均等割」は赤字決算でも納付しなければならない税金となります。

法人事業税

法人事業税とは、会社の事業所得に対して課される地方税の一種です。
会社が事業を行う際に利用している公共サービスなど(道路、港湾、警察、消防なども含む)について、その運営費の一部を会社に負担してもらう趣旨で設定されています。

赤字決算の会社は、資本金1億円以下である場合に限り、法人事業税が免除されます。

地方法人特別税

地方法人特別税とは、会社の所得に対して課される国税の一種です。
従来の法人事業税(地方税)の税率を引き下げ、引き下げた分を地方法人特別税(国税)として再設定した形ですので、会社負担の税額が増えるわけではありません。

地方法人税と同様、自治体の状況を勘案してバランス良く国から各自治体へと配分されます。赤字決算の会社には、地方法人特別税が課されません。

赤字決算でも融資を受けられるのか?

赤字経営から脱却するためには、事業の立て直しが必要です。事業の立て直しのためには、お金が必要です。
赤字決算の会社が融資を受けにくいことは事実ですが、融資を受ける方法がまったくないというわけではありません。

例えば不動産を持っている会社であれば、仮に銀行の担保が設定されている不動産であっても、不動産担保ローンを借りられる可能性があります。不動産に抵当権が設定されていないのでしたら銀行融資も可能です。
しかし、すでに抵当権が設定されている場合には、二番抵当、三番抵当などの形で、ノンバンクに不動産担保ローンを申し込むことができるでしょう。

融資とは異なりますが、保有する不動産を売却して現金を作り、家賃・地代などを払いながら引き続き同じ不動産を利用できる「リースバック」という方法も有効でしょう。

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