会社設立後に倒産せずに続く存続率は想像以上に低い?
ここでは、会社設立後の存続率、存続率を低くする要因、存続率を高めるためのポイントなどについて解説しています。
「会社設立10年後の存続率は10%未満」などと言われることがありますが、その数値は本当なのでしょうか?
目次
会社設立後の存続率
日本における会社設立後の存続率については、データを公表している機関により大きく異なるのが実態です。
以下、中小企業庁が公表しているデータと日経ビジネスが公表しているデータを比較してみましょう。
中小企業庁が公表しているデータ
中小企業庁が公表したデータによると、日本企業の設立後1年目の存続率は95.3%、3年目の存続率は88.1%、5年目の存続率は81.7%。5年目のみで比較すると、ドイツやアメリカ、イギリスなどの先進国の実に約2倍という存続率を誇ります。
参照したデータの調査会社は帝国データバンク。帝国データバンクが抽出した企業のみが調査対象となります。
参照:中小企業白書2017
日経ビジネスが公表しているデータ
一方、2017年にリリースされた「日経ビジネス」での記事によると、ベンチャー企業の設立後5年目の存続率は15.0%、10年目の存続率は6.3%、20年目の存続率は0.3%とのこと。
中小企業庁が公表しているデータとは著しく異なる結果ですが、当データは京王義塾大学大学院経営管理研究科の授業で示されたものであることから、何らかの客観的根拠に基づく数値であることは確かでしょう(データの具体的な出典は不明)。
参照:「創業20年後の生存率0.3%」を乗り越えるには
どちらが正しいデータか?
中小企業庁と日経ビジネスが公表しているデータについて、どちらが正しいデータであるかを判断することはできません。どちらも何らかの調査結果に基づき公表しているデータなので、調査対象の選定基準が異なる可能性があります。
なお、中小企業庁は同資料の中において「実際の生存率より高めに算出されている可能性がある」と注釈を入れています。一方で日経ビジネスが公表しているデータは、あくまでもベンチャー企業の存続率となるため、企業全体の実際の存続率より低めに算出されている可能性も否定できません。
存続率を低くする主な要因
中小企業庁と日経ビジネス、どちらのデータを参考にするにせよ、会社設立と同時にすべての企業が存続の危機に晒されていることは確かです。
以下、会社が存続率を低くする主な要因を見てみましょう。
業績低迷から抜け出せない
サービス内容と市場ニーズとの不一致、顧客の期待値とサービスの質とのギャップ、弱い営業力などにより、業績低迷から廃業となるケースは多く見られます。
資金繰りが悪化している
事業自体には問題がないにもかかわらず、一時的な資金繰りの悪化により廃業する例は少なくありません。資金繰り悪化により、黒字倒産する会社もあります。
人材が足りない
少子高齢化社会が到来したことに加え、団塊世代の大量流出も重なり、あらゆる業界で人材不足が深刻化しています。
無駄遣いが多い
社長や上層部における、いわゆる放漫経営が経営悪化を招くことも珍しくありません。特に資本力の乏しい中小企業は要注意です。
他社からの二次被害を受けた
元請会社や重要な納品先が倒産し、二次被害で自社が廃業に追い込まれることもあります。
売掛金を回収できなくなった
納品先の廃業や資金繰り悪化などにより、売掛金を回収できなくなったことで自社が廃業することもあります。
存続率を高めるためのポイント
上記の存続率を低くする主な要因を常に意識しながら、次にご紹介する存続率を高めるポイントを押さえて経営を進めることが大切です。
常にコスト削減の余地を考える
会社存続のためには、売上を上げることに加え、コストを削減することも大切です。ムダな出費を抑えるべく、社内にチェック機能を働かせましょう。
突発的な事態に対応できる資金力を蓄えておく
2020年頃、新型コロナの感染拡大の影響で倒産した企業は、非常に多く見られました。近い将来の大地震が予想されている中、不可抗力から会社を守ることができる体力(=資金力)を蓄えておくこが大切です。
「現状維持は衰退」という意識を持つ
経済社会や科学技術が進歩を続けている以上、現状維持に固執する企業は相対的に衰退します。古い慣習や文化にとらわれすぎず、常にイノベーションの発想で会社経営をしていく姿勢が望まれます。
目先の儲けよりも長期的な社会貢献を目的にする
目先の儲けを重視する企業は、常に多忙な環境に晒されながら、徐々に経営が衰退します。長期的な社会貢献を目的に余裕を持つことが、長く会社を存続させるためのポイントとなるでしょう。
後継者の育成を怠らない
中小企業の後継者不足は社会問題化しています。早い段階から後継者育成に取り組んだり、M&Aで後継者を探したりなど、自分が引退した後も会社が存続する土台を構築することが大切です。
【まとめ】ビジネスに対する本気度の強さが存続率を左右する
日本における会社設立後の存続率、会社の存続率を低くする主な要因、存続率を高めるポイントなどについて解説しました。
存続率の数値だけを見る限り、起業家の多くは、会社設立にあたり多少の不安を抱くかもしれません。しかしながら、将来的なビッグビジネスを具体的に思い描いている起業家は、その大きな夢が頭から離れず、不安が湧いてもすぐにかき消されてしまうものです。
そのような起業家は、たとえ事業で行き詰まることがあっても、何らかの打開策を見つけるなどして、簡単には廃業を選びません。つまるところ、ビジネスに対する本気度の強さこそが、そのまま存続率に反映されるのではないでしょうか。