会社の設立に固定電話は必須?代替手段はある?
目次
会社設立登記に固定電話は必須ではない
結論としては、会社設立に際して固定電話の導入は不要です。
会社設立登記において、会社の電話番号は登記事項に含まれていないからです。
役所に提出する「法人設立届出書」には電話番号を記入する欄がありますが、この欄には携帯電話の番号を記載しておけば、何ら問題はありません。
ただし、会社設立をする際に固定電話を導入するとメリットがあります。
以下、固定電話を導入したほうが良い主な理由をご説明します。
会社に固定電話があったほうが良い理由
社会的な信用を得られる
昔から「固定電話があることが社会的な信用につながる」と言われていますが、この価値観は、まだまだ現代にも生きています。
若い方々の中には「固定電話も携帯も同じコミュニケーションツールなのだから、社会的信用とは関係ないのでは?」と感じる方がいることでしょう。
しかし、世の中のあらゆる商品・サービスの購買層は、若い方々ばかりではありません。
むしろ会社にとっての大口顧客となりうるのは、お金のある年配層です。
そのような層では、携帯からかかってきた電話に対し「本当に会社の実体があるのだろうか?」「詐欺の電話では?」と思う方が少なくありません。
つまり、携帯から電話をすることが、みずからビジネスチャンスを放棄しているような格好になることもあるのです。
法人用の銀行口座開設に必要
多くの金融機関、特にメガバンクでは、法人口座を開設する際に固定電話の記載が必須となっています。
固定電話を導入しなければ口座開設ができず、口座開設ができなければ融資を受けることもできません。
また、一般的には法人用クレジットカードの新規申し込みにおいても、固定電話の記載が求められます。
プライベートと仕事の棲み分けをしやすくなる
会社の電話番号を自分の携帯電話の番号にした場合、プライベートで家族や友人からかかってくる電話と、仕事で取引先や行政などからかかってくる電話が、1つの携帯に集約されます。
休日に仕事の電話がたくさん入ったり、大事な商談中に友人から飲み会の誘いの電話が入ったりなど、プライベートと仕事の情報が混在してしまいかねません。
また、プライベートの携帯番号を会社の電話番号として公式HP等に掲載した場合、いたずら電話や詐欺まがいの電話が増えたりなど、様々なトラブルを抱えてしまう可能性もあるでしょう。
会社に固定電話を導入することで、これらの問題はほとんど解消されます。
会社設立に使える固定電話の種類とメリット・デメリット
NTT加入電話
固定電話を導入するにあたり、真っ先に思いつくのがNTT加入電話となるでしょう。
実績、信頼、通信の安定性など、どの側面から見ても圧倒的な存在感があります。
メリット
- 社会的な信頼性が高い
- 通信状態・電話回線が安定している
通話機能だけではなく、工事なども含めたあらゆる対応において、NTT加入電話は十分な社会的信頼を獲得しています。
光回線を始めとした各種電話サービスが豊富に用意されているため、自社に最適な固定電話サービスをNTT1社だけで検討できます。
デメリット
- 初期費用が高い
- 通話料が高い
携帯電話での無料通話アプリや格安通話プランが日常生活に浸透している方にとって、NTT加入電話の初期費用や通話料は高額に感じられることでしょう。
電話回線工事費や電話機購入の費用の他にも、新規でNTT加入電話を申し込む場合には、別途36,000円の「電話加入権」を購入しなければなりません。
光IP電話
光IP電話とは、NTTが提供する光通信インターネットサービスを利用した電話サービスです。
光通信インターネットを利用している法人が検討したい固定電話サービスとなります。
メリット
- NTT加入電話よりも料金が割安
- 市外局番(03など)から始まる電話番号を設定できる
- 緊急電話(110・119など)も利用できる
NTT加入電話よりも割安の料金設定となっていますが、インターネット回線と同時に利用する予定であれば、特に料金のお得感を実感できることでしょう。
デメリット
- 光回線の障害発生時に電話が使えない
- インターネットとセット契約が必要となることもある
インターネットを使う予定のない法人であっても、光回線を導入するための回線工事が必要となります。
光IP電話を導入する際には、光回線のインターネットも同時に検討したほうが良いでしょう。
直収型電話
直収型電話とは、NTT以外の通信事業者がNTTの電話回線を借りて運営している電話システムのこと。
ユーザーはNTTと契約するわけではないので、直収型電話サービスを提供している事業者に利用料金を支払う形となります。
NTTと直接契約をするよりも料金が割安となることが多いのですが、プランによっては料金があまり変わらないケースもあるので、割安感から契約する場合には事前に料金をよく比較してみるようにしましょう。
メリット
- NTTの「電話加入権」を購入する必要がない
- NTT加入電話に比べて利用料金が安くなることが多い
- 緊急番号(110・119など)を利用できる
- 発信者番号通知などNTT加入電話と同様のサービスが整っている
取引先等とのコミュニケーションに直収型電話を利用し、社内コミュニケーションにはSkypeやLINEなどの無料通話を使用するなどの棲み分けをすれば、トータルでの通信費を抑えることができるでしょう。
デメリット
- 電話機が必要となる(スマートフォンだけで導入はできない)
- 基本サービスにはインターネット回線が含まれていない
インターネット回線をあわせて導入する場合には、基本とは別のプラン・サービスを申し込む必要があります。
クラウドPBX
スマートフォンやパソコンなどを通じてアプリをインストールし、クラウド上のサーバー経由で通話する電話サービスです。
内線通話やPBX機能(電話回線の交換機)をサーバーから利用できます。
メリット
- 市外局番(03など)から始まる電話番号を使える
- 緊急番号(110・119など)への発信もできる
- 留守電・保留など通常の固定電話と同じ機能がある
- 専用アプリをインストールするだけで使える
同じ拠点でなくても内線通話ができる点も、クラウドPBXのメリットです。
内線通話にはスマホを利用できるため、拠点ごとに電話機を設置する必要はありません。
デメリット
- 複数拠点でのコミュニケーションが不要な会社ではメリットが少ない
- ネット回線が不要な会社には向いていない
一人会社のように、複数拠点での展開を前提としていない会社にはメリットの少ない電話サービスなので、そのような会社はクラウドPBXではなく通常の固定電話を検討したほうが良いでしょう。
電話代行・秘書代行サービス
電話代行・秘書代行サービスとは、取引先やユーザーなどからの問い合わせ等に対し、電話対応をしてくれるサービスのことです。
主なサービス内容は、問い合わせ対応、クレーム対応、不良品交換依頼対応、契約代行、テレアポ代行などです。
膨大な問い合わせ電話に対して既存の社員だけでは対応できない会社や、もともと膨大な問い合わせを生むことを経営戦略の1つとしている会社には、大変重宝される固定電話サービスとなるでしょう。
メリット
- オフィスに社員不在時でも電話対応してくれる
- 電話対応に時間を取られないため本業に集中できる
- 社員不在時の機会損失を減らすことができる
電話代行・秘書代行サービスは、あらゆる業界に広く浸透しているため、サービス業者同士での競争が働いてサービス内容がブラッシュアップされています。
英語対応、フリーダイヤル対応など、業者によって様々なオプションが用意されている点も魅力です。
デメリット
- 利用料金が高い
- オペレーターの質にバラつきがある
業者やサービス内容、オプションなどによって料金は異なりますが、業者のオペレーターを配置して提供しているサービスである以上、固定電話導入に比べると高額な料金がかかることは避けられません。
また、たまたま電話に出たオペレーターの対応により、クレームが膨らんでしまうなどのリスクもあります。