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会社設立の必須知識!流れや必要書類、税理士への依頼内容は?

ここでは、会社設立の流れや必要書類などについて網羅的に解説しています。

会社設立に際し、自分で設立手続きを行うか税理士等の専門家に依頼するかをお悩みの方もいると思いますが、いずれを選択するにしても、こちらで解説している手続きは必要となります。
今後の会社設立に向けた参考となれば幸いです。

目次

会社の種類

会社には「株式会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」の4種類があります(※)。
ここでは、それぞれの会社の概要やメリット・デメリットを確認してみましょう。

※「有限会社」は存在しますが、2005年5月1日に有限会社法が廃止されたことに伴い、以後は有限会社の新設ができなくなりました。

株式会社

株式会社とは、出資者と経営者が別々になるタイプの会社のこと。出資者の責任範囲は出資額が上限となります。

他の会社形態に比べると、社会的信用力が高い点は株式会社の特徴。
そのため、取引先の新規開拓や金融機関からの融資、優秀な人材の雇用など、様々な面において優位に立てる点が株式会社のメリットになります。

一方で、設立までの手続きが煩雑であったり設立コストが高めであったりする点、および従業員の人数に応じて労務管理等が複雑になる点などが株式会社のデメリットになるでしょう。

発起設立と募集設立の違い

株式会社の設立形態として、発起設立と募集設立があります。

発起設立とは、設立時に発行する株式のすべてを発起人が引き受けるタイプの設立形態。
募集設立とは、設立時に発行する株式の一部を発起人が引き受け、残りの株式を引き受ける株主を募集するタイプの設立形態です。

一般的に、発起人だけで出資金全額をまかなえるような小規模な株式会社であれば発起設立、発起人だけでは出資金をまなかえないような規模の株式会社であれば募集設立が適しています。

合同会社

合同会社とは、出資者と経営者が同じになるタイプの会社のこと。出資者の責任範囲は出資額が上限となります。

株式会社に比べ、設立手続きが簡素で設立コストも安い点、経営の自由度が高い点などが合同会社の主なメリット。

一方で、株式会社に比べると社会的信用力が劣る傾向にあるため、融資や顧客開拓などで株式会社よりも不利になる点がデメリットとなるでしょう。

合名会社

合名会社とは、出資者全員が無限責任社員となる会社のこと。
世界中で古くから存在するタイプの会社で、日本でも明治時代の財閥などが合名会社を持株会社化する例が見られました。

合同会社と同様に、設立手続きが簡素で設立費用も安いこと、経営の自由度が高いことなどが合名会社の主なメリット。

一方で、出資者全員が無限責任社員になることから、会社倒産時には社員の負担が大きくなる点はデメリットになるでしょう。

合資会社

合資会社とは、有限責任社員と無限責任社員の両方からなる会社のこと。

株式会社・合同会社・合名会社は最低1人から設立できますが、合資会社のみ、設立には2人以上の社員(有限責任社員と無限責任社員)を必要とします。

株式会社に比べ、設立手続きが簡素な点はメリットですが、合同会社の誕生により、合資会社のメリットはほとんどなくなったのが現状。

一方、倒産時の無限責任社員の負担が大きいこと、設立時に2名以上の社員を必要とすること、社員によって責任範囲が不平等であることなどがデメリットとして挙げられます。

会社設立の流れ

会社設立の流れについて、以下では株式会社を例に確認してみましょう。

株式会社の設立に要する期間は早ければ1週間ほどですが、中には1か月ほどを要する例も珍しくありません。

設立が先延ばしになるほど、ビジネスチャンスも先延ばしになります。
スピーディに会社設立が完了するよう、設立手続きの流れをイメージしておくことはとても大切です。

発起人を決める

株式会社の設立を推し進める中心的な存在が発起人です。
個人か法人かを問わず発起人になることができます。

発起人は1名以上を立てる必要があり、かつ発起人となった者は1株以上出資しなければなりません。

印鑑作成を依頼する

設立登記を行う際、登記申請書に会社の代表印を押す必要があります。
印鑑の作成が遅れると登記申請も遅れてしまうため、早めに印鑑業者へ印鑑の作成を依頼しましょう。

なお、会社の設立・運営において必要となる印鑑は3種類。
設立登記の際に必要となる「実印」、銀行に法人名義口座を開設する際に必要となる「銀行印」、日常業務で必要となる「角印」です。

設立登記に先立ち、これら3種類の印鑑作成をまとめて業者に依頼しておくと良いでしょう。

会社の基本事項を決める

定款や登記申請書には会社の基本事項を記載する必要があるため、各種書類の作成に先立って発起人や専門家等と打ち合わせをし、記載すべき基本事項の概要を決めましょう。

決めるべき基本事項は、商号、事業目的、事業内容、本店所在地、資本金の額、各発起人の出資額、発行可能株式総数、決算月、公告の方法など。
最低でも、後述する「定款の絶対的記載事項」は決めておく必要があるでしょう。

「決算月」の決め方は任意

会社の決算月は「3月」が多い印象ですが、3月にしなければならないというルールがあるわけではありません。決算月は、会社が任意で決められます。

一般的に決算月に良いとされる月が、会社設立から12か月後。
決算月の2か月後には税務申告をすることになりますが、税務申告には煩雑な集計や書類作成が必要となるため、多忙な会社設立時点から少しでも先延ばしする意味で12か月後にするのが良いとされています。

また、消費税の支払いタイミングを少しでも先延ばしできるという意味においても、決算月を設立から12か月後にするのが良いと言われることがあります。

「本店所在地」は自宅やバーチャルオフィスも可

会社の本店所在地は、購入した物件や賃借した物件の他、自宅やレンタルオフィスなどにできます。
また、会社設立登記用の「住所のみ」を賃借する、いわゆるバーチャルオフィスも本店所在地にできます。

それぞれの特徴や長所・短所を理解した上で、業務に最適な場所を本店所在地とするようにしましょう。

定款を作成する

決定した基本事項をはじめ、会社に関する各種の事項をまとめた定款を作成します。

定款は「会社の憲法」と呼ばれる大事な書類であり、以後の業務にも大きな影響を与えることになるため、内容をまとめる際には税理士などの専門家に相談することが望まれます。

定款認証を受ける

作成した定款を公証役場に持参し、公証人から認証を受けます。
法令にしたがって正確に作成されていれば、特に問題なく認証を受けられるでしょう。

定款認証手続きには、手数料として約52,000円を支払います。

なお、公証役場で認証を受けた定款は、その後、法務局へ提出することになりますが、定款を紙ベースで作成した場合には印紙代が40,000円かかります。

一方で、定款を電子媒体で作成した場合には印紙代がかかりません。
少しでも設立コストを節約するために、可能であれば電子媒体で定款を作成するようにしましょう。

出資金を払い込む

発起人か設立時取締役の中の1人の銀行口座に、出資者全員が出資金を払い込みます。この出資金が資本金となります。
出資金の払い込みは、定款認証を受ける前に行っても構いません。

また、現物出資(不動産や車など金銭以外の現物での出資)を行う場合には、出資する現物を時価評価し、資本金の一部として貸借対照表に記載します。

なお、いわゆる「1人会社」の設立の場合には、発起人たる自分が自分の銀行口座に出資金を払い込む形となります。

登記申請書類を作成する

法務局に提出する登記申請書類を作成します。
書類の記載内容は、商号や本店所在地、事業目的、資本金の額、発行済株式総数、取締役の氏名、公告の方法など。

定款に記載した内容と重複する部分が多くなりますが、登記申請書類の記載内容は商業登記法によって定められているため、法令に準拠し、ヌケ・モレなく正しく記載する必要があります。

記載内容に不備があれば、改めて書類を作成し直すことに。
二度手間にならないよう専門家へ相談して書類作成しておくことをオススメします。

会社設立登記を行う

作成した登記申請書類や定款、その他の必要書類をまとめ、法務局で会社設立登記を手続きします。

上でも触れましたが、紙ベースで定款を提出する場合には印紙税が40,000円かかります。
しかし、電子媒体で定款を提出する場合には印紙税がかかりません。

また、定款の印紙税の他にも登録免許税がかかります。
登録免許税の額は「150,000円と資本金の1,000分の7」のうち高いほうになります。
登録免許税の納付は収入印紙と銀行振込、どちらでも構いません。

なお、会社設立登記が完了して以降は、必要に応じて法務局で会社の印鑑証明書を取得できます。
事前に「印鑑カード」を取得しておけば、代表者以外でも会社の印鑑証明書の交付を受けることが可能です。

会社の印鑑証明書を必要とする手続きがスムーズに行えるよう、あらかじめ「印鑑カード」を作成しておくようオススメします。

その他の役所窓口で必要な手続きを行う

法務局で会社設立手続きが完了した後、法務局以外の役所の窓口で、各種の必要な手続きを進めます。
手続きには印鑑証明書や登記簿謄本が必要になる場合もあるため、都度取得する手間がかからないよう、事前に複数枚を取得しておくと良いでしょう。

税務署に提出が必要な書類

  • 法人設立届出書
  • 青色申告の承認申請書
  • 給与支払事務所等の開設届出書
  • 源泉徴収税の納期の特例の承認に関する申請書

他にも、条件に応じて提出が必要となる書類もあります。

都道府県税事務所・市区町村役場に提出が必要な書類

  • 法人設立届出書

法人住民税と法人事業税に関連して必要となる書類です。東京23区に本店所在地がある場合のみ、市区町村役場への提出は不要です。

年金事務所に提出が必要な書類

  • 新規適用届
  • 新規適用事業所現況書の添付書類
  • 被保険者資格取得届
  • 健康保険被扶養者(異動)届

他にも、条件に応じて提出が必要となる書類が複数あります。詳細は年金事務所に確認しましょう。

なお、年金事務所への書類提出期限は、会社設立から5日以内となっています。
上記「新規適用事業所現況書の添付書類」の中には口座振替依頼書が含まれているため、添付書類の提出時点までに、銀行等で法人口座を開設しておかなければなりません。

労働基準監督署に提出が必要な書類

  • 労働保険/保険関係成立届
  • 労働保険/概算保険料申告書
  • 就業規則(変更)届
  • 適用事業報告書

従業員を雇用した場合には、本店所在地を管轄する労働基準監督署に赴き、上記のような書類を提出する必要があります。

ハローワークに提出が必要な書類

  • 雇用保険/適用事業所設置届
  • 雇用保険/被保険者資格取得届

労働基準監督署での手続きが完了した後、本店所在地を管轄するハローワークにて、雇用保険に関する上記の届出をします。

会社設立に必要となる「定款」の記載事項について

会社を設立する上で、定款の作成は必須事項となります。

定款に記載する内容は、大きく分けて「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3種類。
以下では、それぞれの記載事項の概要について確認してみましょう。

絶対的記載事項

絶対的記載事項とは、必ず定款に記載しなければならない事項を言います。
もし記載漏れがあれば、公証役場で定款認証を受けることができません。

具体的には次のような項目を記載します。

  • 商号(会社の名称)
  • 目的(会社の事業内容)
  • 本店の所在地
  • 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
  • 発起人の氏名または名称および住所
  • 発行可能株式総数

相対的記載事項

相対的記載事項とは、もし記載した場合には絶対的記載事項と同様に効力が生じる項目を言います。

例えば次のような項目です。

  • 変態設立事項(会社法28条)
  • 取締役会の設置(会社法326条2項)
  • 監査役会の設置(会社法326条2項)
  • 会計監査人の設置(会社法326条2項)

現物出資や財産引受などを行う場合には、変態設立事項の記載が必要になります。

任意的記載事項

任意的記載事項とは、絶対的記載事項と相対的記載事項に含まれない項目のうち、合法的な範囲内で会社が自由に定められる項目を言います。

決定事項を明確にしたり社内に周知したりといったことを目的に、会社が任意で定款に記載します。

例えば次のような項目です。

  • 取締役の人数
  • 株券不発行に関する規定
  • 事業年度に関する規定

定款変更が必要となる場合の例

絶対的・相対的・任意的のいずれであれ、その内容を変更する際には、株主総会の特別決議を通じた定款変更手続きが必要となります。

例えば「本店の所在地」を変更した場合には、速やかに定款変更をしなければなりません。

なお、最初の定款に記載した「本店の所在地」を、例えば「東京都品川区」だけで止めておいた場合には、品川区内での住所移転であれば定款変更は不要です。

住所変更に限らず、将来的な定款変更の手間を省くための有利な記載方法については、税理士等の専門家から助言を受けることができます。

会社設立にかかる費用

会社を設立する際には、各種書類の用意や申請等において、一定の費用がかかります。

以下では、現在の主な会社形態である「株式会社」と「合同会社」について、それぞれ設立に要する費用の目安を確認してみましょう。

株式会社設立にかかる費用の目安

株式会社設立にかかる法定費用は、合計で約250,000円となります。

内訳は、定款の認証手数料が30,000~50,000円、定款の謄本手数料が2,000円、定款の収入印紙代が40,000円(電子定款の場合は不要)、登録免許税が150,000円です。
これらの他、会社の実印作成代や発起人個人の印鑑証明取得費、登記簿謄本の発行費などが合計で100,000円ほどかかります。

なお、資本金は「1円~」で可能です。

合同会社設立にかかる費用の目安

合同会社設立にかかる法定費用は、合計で約100,000円となります。

内訳は、定款の収入印紙代が40,000円(電子定款の場合は不要)、登録免許税が60,000円です。
これらの他、会社の実印作成代や発起人個人の印鑑証明取得費、登記簿謄本の発行費などが合計で100,000円ほどかかります。

なお、資本金は株式会社と同じく「1円~」で可能です。

以上の株式会社・合同会社設立の費用については、あくまでも「自分で会社設立した場合」の目安となります。
税理士等の専門家に依頼した場合には別途で税理士報酬等がかかりますが、設立後に顧問契約を結ぶ前提の場合には、設立にかかる報酬額が減額されることもあります。

会社設立に利用できる補助金・助成金

会社設立のためには、一定の資金を用意しなければなりません。
もちろん会社設立後においても、事業を継続するためには常に資金を必要とします。

これらの資金全額を自己資金で用意できる人は、ほとんどいません。
出資、融資、補助金、助成金などを通じ、多くは自己資金以外からお金を集めることになるでしょう。

以下では、資金調達の主な手段として、融資・補助金・助成金の概要を確認してみましょう。

融資

融資とは金融機関からの借入を言います。

企業が融資を受ける場合、これを「企業融資」と言います。
企業融資の主体は、銀行や信用金庫、日本政策金融公庫、地方自治体、消費者金融、信販会社などです。

あくまでも融資は「借金」なので、決まった期日までに決まった金額を返済しなければなりません。
返済する際には、あらかじめ取り決めておいた利息も合わせて支払います。

借入可能額を満額で借りた場合、返済のために事業が行き詰まることもあるので、専門家等の助言を仰ぎながら適切な借入金額を算出する必要があるでしょう。

補助金

補助金とは、事業計画書などの審査を経て、経済産業省や地方自治体から受給されるお金のこと。
具体例としては、小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金、ものづくり補助金などがあります。

審査で支給を却下されたり、競争倍率の高さを理由に選考から漏れたりと、申請すれば必ず受給できるという類のものではありません。

なお、融資とは異なり、補助金に返済義務はありません。

助成金

助成金とは、決められた条件を満たして申請をすれば、必ず受給できるお金のこと。

厚生労働省や地方自治体などが主体となって助成金事業を行っています。
キャリアアップ助成金やトライアル雇用助成金、人材確保等支援助成金など、雇用・労働に関連する助成金がよく見られます。

助成金も融資とは異なり、返済義務はありません。

会社設立後の消費税に関する注意点

会社設立後の消費税について、令和5年10月からインボイス制度が始まることにより、従来の消費税の取り扱いが変わります。

消費税の納税については、一定の条件を満たしていれば免税事業者とされていましたが、インボイス制度の開始により、実質的に免税事業者は課税事業者になる可能性が出てきました。

消費税納税の基本的な仕組み

飲食店を例に、消費税納税の仕組みを簡単に見てみましょう。

飲食店を経営するためには、食材等の仕入れを行わなければなりません。
仕入れの際には卸業者等に、代金とともに消費税を支払います。

一方で飲食店は、来店するお客さんから、代金とともに消費税をもらいます。
飲食店の運営において、払う消費税ともらう消費税の2種類が登場する形です。

簡単に言えば、この「もらう消費税」から「払う消費税」を差し引いた金額が、国に納める消費税となります。

免税事業者になる要件

原則として、すべての事業者には消費税の納税義務がありますが、一定の条件を満たした場合には、消費税の免税事業者として納税が免除されます。

次の2つの条件を満たした場合、消費税の免税事業者となります。

  • 設立から1期目・2期目の法人において、期首の資本金が1000万円未満
  • 前々事業年度の課税売上高が1000万円以下

設立1期目と2期目は「前々事業年度」がありません。
そのため、資本金が1000万円未満であれば、自動的に消費税の免税事業者となります(例外はあります)。

インボイス制度の開始後における消費税の取り扱い

事業者の消費税の取り扱いについて、令和5年10月1日からインボイス制度が開始されます。

インボイス制度とは、売り手から買い手に対し、取引の際に領収書・請求書などの書類(インボイス)を交付する制度のこと。
制度の開始後は、「もらう消費税」から「払う消費税」を差し引くにあたって、売り手から交付されるインボイスの保存が必要となります。

このインボイスを発行できる事業者は、消費税の課税事業者として登録を受けた事業者のみ。
つまり、消費税の免税事業者は、買い手に対してインボイスを発行できないことになります。

売り手から見れば、インボイスを交付してもらえない免税事業者と取引をすると、消費税の計算の上で不利になります。
そのため、なるべくインボイスを交付してもらえる課税事業者と取引をしたいと考えるでしょう。
結果、免税事業者はこれまでのお得意様を逃してしまう可能性があることから、免税事業者をやめて課税事業者の登録を目指すことになるかもしれません。

従来、条件さえ満たせば会社設立から2年間の免税期間の可能性がありました。
しかし、インボイス制度の開始以降は、免税事業者になることが逆にビジネス上のデメリットになる可能性が出てきました。

個人事業主と比較した会社設立のメリット・デメリット

個人事業主とは、法人を設立せずに独立して個人事業を営む人を言います。

会社設立と同様に独立した経済活動の主体になりますが、設立の手続きは非常に簡単で、基本的には税務署に「開業届」を提出するのみ。
手数料もかからず、資本金も必要ありません。

また、会社ほど範囲は広くないものの、事業運営に要したコストも経費として計上できます。

設立が簡単なことや設立に関する法定費用がほとんどかからないことなど、一見、会社よりも有利に思える個人事業主。
以下では、個人事業主と比較した場合の会社のメリット・デメリットを確認してみましょう。

個人事業開業に比べた時の会社設立の主なメリット

社会的信用力が高まる

個人事業開業と比べた場合の会社設立の主なメリットは、何よりも社会的信用力が高くなる点です。

社会的信用力が高いということは、それだけ仕事を受注できる可能性が高まるということ。
また、信用力が高いからこそ、優秀な人材が集まりやすくなり、かつ金融機関からの融資も有利になるでしょう。

税金面で有利

2つ目のメリットが、個人事業主よりも税金面で有利になること。
個人事業主が収める所得税は、利益が上がるほど税率も上がりますが、会社が収める法人税は、利益が上がっても原則として税率が一定です。

また、個人事業主よりも経費にできる項目の幅が広くなる点も、税制面でのメリットと言えるでしょう。

事業承継しやすい

3つ目のメリットが事業承継をしやすいこと。
個人事業主の場合、事業主が死亡すると口座が一時的に凍結されて事業に支障をきたすことがありますが、会社の場合、代表が死亡しても口座は凍結されません。

代表の登記を変更するだけで、スムーズに事業承継が完了します。

個人事業開業に比べた時の会社設立の主なデメリット

時間やコストがかかる

個人事業開業に比べた場合の会社設立の主なデメリットは、何より設立に時間やコストがかかる点です。

設立に要する期間は短くて2週間ほどで、1か月以上かかる例も少なくありません。
設立にかかる法定費用もやや高く、専門家に依頼すれば別途で報酬を支払う必要もあります。

社会保険の加入義務がある

2つ目のデメリットが、社会保険に加入する義務が生じること。

従業員を雇った場合だけではなく、社長の1人会社でも社会保険に加入しなければなりません。
個人事業主が納める国民健康保険や国民年金に比べ、会社による社会保険料の負担は高額になります。

赤字でも法人住民税がかかる

3つ目のデメリットが、法人住民税の均等割を納める必要があること。

法人住民税には均等割と法人税割がありますが、これらのうち、均等割は「たとえ赤字であっても」納める必要のある税金です。
個人事業主の場合、赤字になれば住民税を納める必要はありません。

会社設立は自分でできるか?税理士に依頼すべきか?

ここまで、会社の種類や設立の流れ、定款の記載事項、資金繰りの種類、消費税の取り扱いなどについてご紹介しました。

ご紹介した内容は、会社設立に関するほんの一部に過ぎません。
実際に設立に向けた動きをスタートさせれば、より煩雑で手間のかかる作業があることを実感できるはずです。

もちろん、会社設立自体は自分でやることも可能です。
時間的に余裕のある方や過去にも自分で設立したことがある方などは、自分で会社設立にチャレンジしてみても良いでしょう。

一方で昨今は、会社設立後に顧問契約を締結することを前提に、税理士報酬の大半をキャッシュバックしている税理士事務所も数多くあります。
キャッシュバックの金額によっては、自分で会社設立するよりも費用総額が安く済むことすらあります。

会社を運営していく上で税理士との顧問契約は半ば必然となっている現状、大きなキャッシュバック制度を設けている税理士事務所があるならば、設立手続きから一任したほうがお得です。
少なくとも、設立後に税理士との顧問契約を結ぶ予定のある会社にとって、自分で会社設立手続きを行うメリットはほとんどありません。

会社設立の「やることリスト」

最後のまとめとして、会社設立の「やることリスト」を確認しておきましょう。

  • 発起人を決める
  • 印鑑を作成する
  • 会社の基本的事項を決める
  • 定款を作成し公証役場で定款認証を受ける
  • 出資金を払い込む
  • 登記申請書類を作成して法務局に提出する
  • 印鑑カードを作成する
  • 税務署で必要な手続きをする
  • 都道府県税事務所・市区町村役場で必要な手続きをする
  • 年金事務所で必要な手続きをする
  • 労働基準監督署で必要な手続きをする
  • ハローワークで必要な手続きをする

これらは、あくまでも会社設立自体に必要な準備です。

本来の目的である会社の経営・運営に向けた準備においては、会社設立手続きとは比較にならないほどの膨大な行動量が必要になるでしょう。

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