売上なしで会社設立すると活動資金や税金はどうなる?
ここでは、売上なしの会社設立の可否、売上なしの状態のまま会社設立するメリット、売上なしの会社に課される税金について解説しています。関連して、休眠会社が決算申告をするメリット・デメリットについても確認しておきましょう。
目次
売上なしでも問題なく会社設立ができる
売上がなければ法人設立登記ができない、という法律はありません。そのため、たとえ売上がゼロだったとしても会社設立することは、問題なく可能です。
過去の極端な例ですが、売上ゼロのまま事業を続けた会社が、その将来性を評価されて上場までいたった例もあるほどです。
もとより、多くの設立直後の会社は、売上がわずかしかありません(売上ゼロも決して珍しくありません)。事業が軌道に乗るまでの数ヶ月間は、売上以外の部分、例えば資本金や役員借入金(役員個人から会社への貸付)から資金を調達して事業を運営している方が一般的です。
事業の成長に自信があるのでしたら、たとえ売上ゼロからのスタートだったとしても、前向きに会社設立に臨みましょう。
売上なしの中で会社設立するメリット
売上なしの状態で会社設立するメリットとして、以下2点を確認しておきましょう。
金融機関からの融資を受けやすくなる
会社設立しただけで簡単に金融機関が融資してくれるわけではありません。
しかし、少なくとも会社設立していない状態に比べれば、融資してくれる可能性が高くなることは確かでしょう。
会社設立をするということは、「利益を出す経営を目指している」という意思表明でもあります。言葉だけで融資交渉してくる人に比べ、会社設立に関連する書類を持参してくる人のほうが、金融機関にとっては魅力的な融資先になることでしょう。
助成金・補助金を受けられることがある
会社設立した上で一定の条件を満たしていれば、公的な助成金や補助金を受給できる可能性があります。
主な助成金・補助金の例としては、例えば「小規模事業者持続化補助金(一般型)」や「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」「IT導入補助金」などです。
これら事業系の助成金・補助金の多くは、会社もしくは個人事業主として開業していることが申請の条件となっています。
【参考】マイクロ法人なら社会保険料を減らすことができる
マイクロ法人とは、社長一人で運営されている会社のことです。マイクロ法人の社長にかかる社会保険料は自身の給与を基準に算定されるため、あえて給与を低めに設定することにより、社会保険料を減らすことが可能です。
個人事業主ではできないスキームとして知られています。
売上なしでも課される税金について
売上なしでも会社設立は可能ですが、個人事業主とは異なり、たとえ会社の売上がゼロや赤字であっても、会社には課される税金があります。それが「法人税均等割」です。
法人住民税均等割とは
会社が課される法人住民税は、大きく「法人税割」と「均等割」の2種類に分かれます。
これらのうち「法人税割」は納税する法人税の額に応じて決まる税金ですので、売上なしで法人税もない会社には課されません。
一方で「均等割」は、売上や法人税ではなく従業員数などを基準に課される税金ですので、売上なしでも課されます。
ちなみに資本金1000万円以下の会社の「均等割」は、おおむね年間7万円前後となります。
その他にも「保有しているだけ」で課される税金がある
法人住民税均等割の他に、売上なしの会社でも「保有しているだけ」で課される税金があります。固定資産税、償却資産税、自動車に関する税金です。
固定資産税とは、会社が不動産を保有していると課される税金のことです。賃貸の場合は課税されません。
償却資産税とは、課税標準額が150万円超の設備に課される税金のことです。製造設備、看板、印刷機、厨房用具などを保有している場合、償却資産税が課される可能性もあるでしょう。
自動車に関する税金とは、自動車取得税、自動車税(軽自動車税)、自動車重量税を言います。自動車取得税は自動車の取得時、自動車税(軽自動車税)は年に1回、自動車重量税は車検のたびに課税されます。
多少の売上がある会社における消費税納税のポイント
設立直後の会社の場合、厳密に見れば「売上ゼロ」ではなく、「多少の売上がある」という状況が大半です。「多少の売上がある」以上、一定の条件に該当すれば、消費税の納税義務が生じます。
以下、小規模な会社における消費税納税のポイントについて簡単に確認しておきましょう。
消費税には「消費税」と「地方消費税」がある
消費税は、大きく分けて「消費税(国税)」と「地方消費税(地方税)」から構成されています。両者を合算した税率が原則10%となっているため、普段の取引において、消費税(国税)と地方消費税(地方税)を分けて考える必要はありません。
ただし決算時には、消費税(国税)と地方消費税(地方税)を分けて行う処理が必要となります。
ちなみに合計10%の消費税のうち、国税部分は7.8%で地方税部分は2.2%。決算処理に慣れるまでの間、やや手間取ってしまうかもしれません。
消費税額の算出方法は「原則課税方式」と「簡易課税方式」の2種類
消費税の納税方法は、基本的に原則課税方式という方法で算出されます。
原則課税方式とは、消費者から預かった消費税と自社が仕入れ等で支払った消費税を相殺し、課税売上高を明らかにした上で消費税率を乗じる算出法です。
もう一方の簡易課税方式とは、業種ごとに決められた「みなし仕入率」を利用して消費税を算出する方法。原則課税方式に比べ、簡易的な計算で消費税の算出が可能です。
売上が少ない小規模な会社の場合(基準期間の課税売上高が5000万円以下の場合)、税務署に届出を出すことで簡易課税方式を選択可能となります。
休眠会社が決算申告をするメリット・デメリット
法的に存在してはいるものの営業活動の実態がない会社のことを、一般的に休眠会社と言います。
休眠会社とはいえ法的に存在している以上、決算申告は必要ですが、多くの場合は申告せずに放っておかれているのが実情です。
以下、休眠会社が決算申告を行うメリット・デメリットを確認してみましょう。
決算申告をしないメリット
休眠会社とはいえ決算申告をするのは義務です。また、決算申告をしないことによるメリットは、特にありません。
決算申告をしないデメリット
法人住民税のうち「均等割」と呼ばれる税金(年間約7万円)については、たとえ売上ゼロの休眠会社であっても、原則として必ず課される税金です。
ただし、一部の都道府県の中には「まったく活動実態がない会社に税金を課すことは好ましくない」との考えのもと、休眠会社に対する法人住民税均等割を免除してくれるところもあるようです。
免除してもらえるかどうかを検討してもらうためには、きちんと決算申告を行い、謙虚な姿勢で都道府県税事務所に相談することがポイントです。義務とされている決算申告もしない会社に対し、都道府県税事務所が温情をかけてくれる可能性はないと考えたほうが良いでしょう。
また、赤字を抱えた状態のまま休眠状態にいたった会社も要注意です。
会社に赤字が生じた場合、9年間にわたる欠損金の繰越控除を受けられるため、以後の活動状況によっては節税効果につながることがあります。
しかし、2年連続で決算申告をしなかった場合には、欠損金の繰越控除を行う権利が消滅します。以後の活動で事業所得が出ても、欠損金の繰越控除を適用できないので、節税できるチャンスを逃してしまうことになります。