夫婦での会社設立で配偶者を役員にするメリットは?
夫婦で会社設立するメリット、配偶者を役員にすることのメリット、夫婦共同経営中における離婚時の対応などについて詳しく解説します。
目次
夫婦で会社設立するメリットとは?
夫婦で会社設立するメリットには多々ありますが、中でも特に税金面に関するメリットが大きいと言えます。
夫婦で会社設立する際の税金面の主なメリットを確認してみましょう。
個人事業主より簡単に所得分散ができる
会社の場合、従業員たる配偶者に給与を支払って所得分散すれば、一定の節税効果を得られます。
個人事業主も配偶者を事業専従者などにすれば所得分散できます。
しかし、配偶者を事業専従者にする場合、年齢や働き方などの条件に加え、事前に税務署へ届出をする必要があるなど、様々な制約があります。
配偶者控除や扶養控除において有利になる
会社の場合には、給与の支払額を年間103万円に抑えることで、配偶者控除や扶養控除などの所得控除を受けることができます。
個人事業主が配偶者を事業専従者として給与を支払った場合には、これら所得控除を適用できません。
夫婦での旅費を経費として処理できることがある
会社の場合、日頃会社の経営に協力してくれる家族を旅行に連れていけば、この旅費を福利厚生費として経費計上できます。個人事業主では、同様の処理ができません。
配偶者を役員にすることのメリット・デメリットとは?
会社設立に際し、自分が代表取締役となり配偶者を役員にする例が多く見られます。以下、配偶者を役員にする上で、特に注目しておきたいメリットとデメリットをご紹介します。
【メリット】役員報酬を全額経費に算入できる
会社設立から3か月以内に税務署で「事前確定届出給与」の手続きをすれば、配偶者に支払われる役員報酬を全額経費に算入できます。
個人事業主でも配偶者を青色事業専従者とすれば、その給与分が所得から控除されますが、各種の制約があるため役員報酬ほど運用が簡単ではありません。
【デメリット】社会保険の負担が大きくなる
配偶者を役員とし、自分を含めて2名以上で会社経営した場合、厚生年金や健康保険、雇用保険、労災保険などに加入する義務が生じます。
個人事業主の国民年金や国民健康保険に比べ、これら会社の社会保険の負担は、かなり大きくなると言わざるを得ません。もちろん負担が大きい分、その保障は手厚くなります。
離婚したら夫婦共同経営の会社はどうなるか?
夫婦で会社を共同経営している中で、もし夫婦が離婚してしまったら会社はどうなるのでしょうか?
また、夫婦それぞれ、会社との関係でどのような対処が必要となるのでしょうか?
離婚後も共同経営を続けるなら何も問題はない
離婚後も共同経営を続けるのでしたら特に問題はありません。離婚に伴って旧姓に戻す場合には、法務局で「氏の変更」登記を申請します。
役員を辞任を望むならば法務局で役員変更申請をする
離婚に伴い、一方が役員の辞任を望むのでしたら、法務局で役員変更の申請をします。株主総会の決議は要りません。
役員が辞任を望まないならば話し合いで解決を目指す
役員が辞任を望まないのでしたら、双方の話し合いで解決を目指すしかありません。
会社が当該役員を解任するという手続きは存在しますが、正当な理由なくして役員を解任できず、かつ離婚は正当な理由にはあたりません。
ローンの保証人になっている場合には要注意
たとえ共同経営者から名前を抜いたとしても、会社が借りたローンの保証人になっている場合には、ローンが完済されるまで保証人の責務を負うことになります。
財産分与に関する注意点
離婚に伴い、夫婦それぞれの私財は財産分与の対象となりますが、会社の財産は財産分与の対象になりません。
出資の有無による共同経営者の役割について
夫婦で共同経営を行っている会社において、共同経営者(配偶者)も出資しているかどうかにより、その役割や状況がやや異なってきます。
共同経営者が出資している場合
共同経営者として出資している以上、事業に関する議論へ積極的に参加したほうが良いでしょう。
ただし、事業がうまく行かなかった時に備え、責任の所在を明確にしておくための覚書は作成しておくことをおすすめします。
共同経営者が出資していない場合
たとえ共同経営者の一方が出資していなかったとしても、経理や労務など、会社にとって不可欠な部分を担当しているのでしたら、立派な共同経営者です。
出資の有無を問わず、互いに求めている部分を補いあえる関係こそ、共同経営のあるべき姿と言えるでしょう。
夫婦で共同経営するなら合同会社が良い
会社形態には複数の種類がありますが、夫婦で共同経営するのでしたら、特別な理由がない限り、合同会社の形態を選ぶようおすすめします。
合同会社をおすすめする主な理由を見てみましょう。
株式会社よりも経営意思決定が迅速になる
合同会社は、いわば街の商店のような会社形態ですので、株式会社とは異なり、その意思決定は簡素かつ迅速です。
重要な意思決定であっても、手間や時間のかかる株主総会を開く必要もありません。
会社への貢献度に応じて自由に利益分配できる
株式会社では、実際の会社への貢献度に加えて出資額も考慮の上で利益を分配する形となりますが、合同会社では純粋に会社への貢献度を基準として利益を分配できます。
出資額よりも、役割分担や仕事量に応じてフェアに利益分配できる合同会社の性質は、家族経営にマッチしたスタイルと言えるでしょう。
個人事業主から法人成りするメリット
所得の金額にもよりますが、一般的に個人事業主から法人成りすると、税金面で有利になる傾向があります。また、税金面以外にも、いくつかのメリットが挙げられます。
以下、個人事業主が法人成りした場合の税金面以外の主なメリットを見てみましょう。
社会的信用が高くなる
一般的に、個人事業主よりも会社のほうが社会的信用度は高くなるため、取引先の開拓や融資交渉において、会社は有利になる傾向があります。
会社に万が一のことがあっても経営者は有限責任
個人事業主の経営が破綻した場合、事業主本人は、これまでの借金などに対して無限責任を負う形となります。
一方で会社の経営が破綻したとしても、経営者本人が負う責任は有限です。
助成金を受けやすくなる
個人事業主に比べ、会社のほうが助成金を受けやすくなります。もとより法人を対象にした助成金については、個人事業主は申請すらできません。
相続・離婚の際の事業継続がやりやすい
会社の場合、会社と経営者は法的に分離された存在となるため、相続や離婚に伴う事業継続が比較的容易です。
一方で個人事業主の場合、事業と経営者は一心同体ですので、相続や離婚などにおける事業継続が、非常に煩雑となります。
社会保険の保障が手厚い
個人事業主に比べ、会社は社会保険の負担が大きくなりますが、その分だけ国からの保障は手厚くなります。
特に老後の年金支給額については、会社の厚生年金は個人事業主の国民年金よりも大幅に高額となります。