外国籍のまま日本で会社設立するにはどんなビザが必要なの?
外国籍の方が日本で会社を設立する際の流れは基本的に日本人と同じですが、いくつかの相違点があります。
主な相違点は、一部の書類が追加されたり異なったりする場合があること、経営管理ビザが必要になること、外為法上の届出が必要になることです。
また、会社名に使用できない文字・語句や出資金の払込みに関する注意点も把握しておく必要があります。
自力で準備するにはあまりにも大変ですので、特に外国籍の方が日本で会社を設立する際には、日本の専門家の力を借りることが望ましいでしょう。
目次
会社設立の流れは日本人も外国人もほとんど同じ
外国籍の方が日本で会社設立する流れは、基本的に日本人が会社設立する際の流れと同じです。
日本人が日本で会社設立する大きな流れは、「定款作成」「公証人による定款認証」「出資金の払込み」「会社設立登記」です。
外国籍の方が日本で会社設立する際も、これらの大きな流れは同じですが、実務的には一部異なることもありますので注意が必要です。
外国籍の方が日本で会社設立する際、日本人とは異なる可能性のある主な点を3つほど確認してみましょう。
相違点①:一部の書類が追加されたり異なったりすることもある
会社設立する場合には法務局で会社設立登記の申請を行うことが必要ですが、設立登記の書類を外国語で記載したまま提出はできません。
外国語で書類を記載した場合には、別途で日本語訳の書類も添付する必要があります。
また、公証人による定款認証や会社設立登記の際には、発起人や代表取締役の印鑑証明書が必要です。
しかし、多くの国ではそもそも印鑑という制度自体が存在していません。
そのため、外国籍の方が日本で会社設立をする際には、印鑑証明書に代わって「サイン証明書」や「宣誓供述書」を提出する必要があります。
相違点②:「経営管理ビザ」が必要になることもある
日本に滞在している外国籍の方の中には、「技術・人文知識・国際業務」「技能」「家族滞在」「留学」などの在留資格(ビザ)を取得している方が多くいます。
これらの在留資格は、まさにその資格の範囲内での活動を許可するものなので、その在留資格のままで会社設立はできません。
もし、これら制限のある在留資格を持つ外国籍の方が日本で会社設立したいのでしたら、在留資格を「経営管理ビザ」に変更する必要があります。
例えば、調理という「技能」で在留資格を取得して日本の料理店で働いている方が自分の料理店を持ちたい場合には、「技能」から「経営管理」に在留資格を変更しなければなりません。
なお、経営管理ビザへの変更手続きは会社設立登記をした後に行う流れとなります。
そのため、もし経営管理ビザへの変更申請をしたにもかかわらず入国管理局から申請が却下された場合、それまで会社設立に要した労力や資金がすべてムダになってしまいます。
例えば、経営管理ビザを取得する場合には「総額500万円以上の出資金または2名以上の常勤職員」が条件となりますが、この条件を満たしていないと判断された場合には経営管理ビザを取得できません。
何らかの理由で在留資格の変更申請が却下されないよう、外国籍の方が日本で会社設立する場合には日本の専門家の力を借りることが必要でしょう。
経営管理ビザの取得方法
事務所を確保して会社設立登記を行い、必要に応じて各種許認可を取得した後に、入国管理局で経営管理ビザの申請を行います。
経営管理ビザの申請に必要な書類は非常に多岐にわたるため、専門家のサポートを受けながら漏れなく用意しましょう。
なお、経営管理ビザの審査に要する期間は約3か月。追加書類の提出を求められれば、さらに期間が延びることもあります。
一定の在留資格(ビザ)を持っていれば日本人と同様に会社設立できる
在留資格(ビザ)が「日本人の配偶者等」「定住者」「永住者」「永住者の配偶者等」の場合には、日本における活動に制限がありません。
日本人と同様、自由に会社設立を行えます。経営管理ビザを取得しなおす必要もありません。
相違点③:外為法上の届出が必要になることもある
外国に居住している外国籍の方が日本に会社を設立する場合、日本銀行を経由し、財務大臣と事業を所轄する大臣に対し、外為法上の届出を要することがあります。
外為法上の届出の多くは事後報告で構いませんが、国や事業内容によって事前報告が必要となることもあるため、会社設立登記の前に外為法を確認しておかなければなりません。
事後報告の場合には、「会社設立登記申請日が属する月の翌月15日」までに届出をします。事前報告の場合には、「会社設立登記申請の日の前6か月以内」に届出をします。
会社名に使用できる文字・語句、できない文字・語句
外国籍の方が日本で会社設立する際、注意したいことのひとつが「会社名に使用できない文字・語句」があるということです。
会社名に使用できる文字・語句、および会社名に使用できない文字・語句を確認しておきましょう。
会社名に使用できる文字・語句
- 漢字、ひらがな、カタカナ
- ローマ字(大文字・小文字のどちらでも可)
- アラビア数字
- 一定の符号(「-」「&」「・」「’」「.」など)
※ピリオドは会社名の最後に使用できますが、それ以外の符号は会社名の最初・最後に使用できません。
※ローマ字による商号のみ「空白(スペース)」を使用できます。
会社名に使用できない文字・語句
- ハングル文字、中国簡体字・繁体字、および上記以外の外国文字
- 会社の一部門を表現する文字(「…事業部」「…支店」など)
- 同一住所に登録されている会社と同じ会社名(類似会社名も不可)
- 特定の業種だけで使用できる語句(「…銀行」「…保険」など)
- 有名企業と同じ会社名
- 商標登録されている会社名
- わいせつな語句・犯罪に関連する語句
外国籍の方が出資金を払込む時の注意点
外国籍の方が日本に会社を設立する際、出資金の払込みに関して「払込みできる銀行口座」と「払込みできる口座名義」に注意する必要があります。
出資金を払込みできる銀行口座
出資金の払込みが認められている銀行口座は次の通りです。
- 内国銀行の日本国内支店の口座
- 内国銀行の海外支店の口座
- 外国銀行の日本国内支店の口座
※外国銀行の海外支店の口座は、出資金の払込み先として認められていません。
出資金を払込みできる口座名義
出資金の払込みが認められている銀行口座名義は次の通りです。
- 発起人の口座名義
- 設立時取締役の口座名義
- 第三者の口座名義
※「設立時取締役の口座名義」または「第三者の口座名義」に出資金を払込む場合には、発起人による払込金の「受領権限」の委任が必要となります。
海外に在住している外国籍の方で、かつ出資金の払込み先として認められている銀行口座を持っていない方は、「払込み先として認められている銀行口座を持つ日本在留の協力者(第三者)」がいれば、出資金を払込むことが可能となります。
なお、日本在留の協力者が共同発起人として会社設立に関わる場合、協力者本人も出資金の一部を出資しなければならないルールがあります。
まとめ
- 外国籍の方が日本で会社設立する流れは基本的に日本人と同じ
- 相違点①:一部の書類が追加されたり異なったりすることもある
- 相違点②:「経営管理ビザ」が必要になることもある
- 相違点③:外為法上の届出が必要になることもある
- 会社名に使用できる文字・語句と使用できない文字・語句がある
- 外国籍の方が出資金を払込む時の注意点:払込みできる銀行口座と払込みできる口座名義に注意が必要